■BOXより転記
UP-3C 対潜哨戒機用レーダシステム
対潜哨戒機用レーダシステムは、海面上に露頂した潜水艦潜遠鏡等の小目標を探知するレーダである。現状のレーダシステムでは高々度から潜望鏡等の小目標を探知するにはバックグラウンドとなる海面クラッタの影響を強く受けるため非常に困難を伴う。また将来の潜水艦はステルス技術を導入しその潜望鏡を探知することはさらに困難と予測される。対潜哨戒機用レーダシステムの研究試作では極力高々度から潜望鏡等の探知が可能であり遠距離から小目標の探知、類識別、測的が可能な以下の技術資料を取得することを目的とした。
・微速小目標検出処理
・静止小目標検出処理
・目標相関検出処理
・機体搭載適合化技術
試作品の設計・制作は契約相手方を株式会社東芝とし平成4年から平成11年の約7年に亘る試作品の設計・制作が行われた。
潜水艦潜望鏡等の小目標を高々度から探知するためには微速小目標検出処理及び静止小目標検出処理を同時に行う必要がありそのため1つのモジュールで2波同時送受信可能なX-バンド、小型・軽量、高出力、高効率であるアンテナ・モジュールを用いたアクティブ。フェーズド・アレイ方式を採用した。
微速小目標検出処理には一定速度の自機の運動により生じるドプラ周波数上の広がりと共に海面クラッタを抑圧するDPCA(Diplaced
Phased Center Antenna)技術を応用し自機速度の変化にも対応させた高精度なアダプティブDPCAを採用した。
静止小目標検出処理は高分解能パルス圧縮にスキャン間積分を組み合わせる技術を応用し自機及び目標の移動量を考慮した高精度のスキャン間積分処理技術を採用した。
目標相関検出処理は微速小目標及び静止小目標の2つの検出処理で得られた結果を統合することによる探知確率の向上を図る統合技術処理として2つの手法を用意し、また得られた目標の速度等の情報から潜水艦潜望鏡らしい目標を弁別する弁別処理としての2つの手法を用意した。機体搭載適合化技術として空中線部の小型軽量化を図った。当初の設計より約40%の軽量化を実施し設計目標を十分に満足するものとなった。冷却方式には冷媒冷却方式を採用した。
平成6年〜7年にアンテナ特製及び処理アルゴリズムの確認を行うための地上試験及び飛行試験を実施した。
平成11年〜12年にはリアルタイム性及び冷却性能を確認するための地上試験及び飛行試験を実施した。
その結果以下の成果を確認した。
・試作品が設計値を満足すること。
・目標相関検出処理の統合化により探知確率が向上すること。
・目標相関検出処理の弁別処理により潜水艦潜望鏡らしい目標の弁別処理が可能であること。
・冷媒冷却方式が有効であること。
試験の成果は平成13年6月の研究開発評価会議において承認された。
本研究試作の成果を基に平成13年度から着手した「次期固定翼哨戒機」のレーダシステムの開発への反映が可能となった。
「次期固定翼哨戒機」用レーダシステムは本研究試作で確立した高々度からの小目標探知技術の他、気象、対水上検索、対空、ISAR、SARの各機能、同時複数運用機能を有する高機能・高性能レーダシステムとする計画である。
■性能諸元
UP-3C
種類 試験評価機
等級 陸上多発
型式 UP-3C
製造会社 川崎重工株式会社
発動機 T56-IHI-14
基数 4基
推力 4,910馬力×4基
全幅 30.4m
全長(ピトー管除く) 35.6m
標準ピトー管の長さ 214.8cm
全高 10.3m
乗員 5名
自重 約75,000lbs
最大離陸重量 135,000lbs
最大速度 395kt
巡航速度 約335kt
実用上昇限度 約31,000ft
行動半径 約2,000nm
燃料容量 約62,560lbs |